勤務医時代に物語が突然頭の中に…芥川賞・朝比奈秋さん「思いつく限りは書かなきゃいけない」…初の候補入りで受賞_asian games 2023 football
朝比奈秋さん(43)が、勤務秋さ「サンショウウオの四十九日」(1870円、医時新潮社)で第171回芥川賞(2024年上半期、代にasian games 2023 football日本文学振興会主催)を受賞した。物語21年にデビューし、が突初の候補入りで同賞を射止めた朝比奈さんは、然頭医師として働く中で突然物語を思いつくようになったという。の中(瀬戸 花音)
受賞の日は、に芥東京・麹町のカフェでポテトを食べ、川賞・朝い初編集者と雑談をしながら知らせを待っていた朝比奈さん。比奈補入集合してから30分で電話があった。ん思書か受賞
「受賞が決まったって言われて、いつりはなきゃいけなりで『ああ、く限そうですか』と思って。の候asian games 2023 footballその後、勤務秋さいろんな人にお祝いの言葉をいただいて、それでああ、よかったんだなと。純文学作家として避けては通れないものなので、半年ごとに周囲がそわそわとすることもなくなる。だから、もう二度と(芥川賞のことが)頭にちらつくことがないから、それもよかったなと思います」
受賞作は、頭も胸も腹もすべてがくっついて生まれた結合双生児の姉妹が主人公だ。「一体だけど一人ではない」。自分と他人の境界はどこにあるのか。体の束縛と精神の自由とは。ふたりは体を共有しながら、日常を暮らし、人生を歩んでいる。
受賞会見で朝比奈さんは「姉妹がかわいそうだと思ったことは一度もない」と言った。
「『かわいそう』というのは無知から生まれてきたりするんです。もし、誰かを『かわいそう』だと思ったら、その人のそばに飛び込んでみればいい。その感覚が自分の偏見から来るものだと気づけば『何や自分と変わらんやん』って思えるし、本当にその人が助けを必要としている状況なら行動につながる。僕は5年前にこの作品を書き始めたときから、姉妹とずっと一緒にいたので、自分と同じ人間としてあたり前のように自然に書けました」
朝比奈さんは小学生の頃は大工を、中学生の頃には英語の翻訳者を夢見た。医者になったのは「命って何だろう」という漠然とした疑問からだ。
「でも、医学部生の頃には『多分自分は命とは何かをミクロなメカニズムで知りたかったわけではなくて、ただただ哲学的に考えてしまうだけだった』と気づいたんです。医者になって、ますます何で人はこんなに苦しむんだろうって思うようになった」
勤務医として働いていた30代半ばの頃、論文の執筆中に突如、物語が浮かんできた。以降、ずっと頭の中に物語がある。診療中にも浮かぶようになり、病院を辞めた。
「物語が思いつく限りは書かなきゃいけない。これはもうそういう体質のようなもの。それで、浮かばなくなったらいろんな人に『思いつかなくなりました』って言って、『今までお世話になりました』って言って…それで静かに去っていく日が死ぬまでに来るか、あるいは死ぬまでずっと思いついて、書き続けることになるか…自分でも分かりません」
もしまた、物語が浮かばない脳に突如戻ったとしたら、専業の医者として生きていくのか。朝比奈さんは「医者としての自覚や、他者の命を背負う気概を自分の中から見つけ出すのがなかなか難しい」と答えた。書き続けられなくなった未来の自分を自然に受け入れようとする思いとは別に、朝比奈さんの言葉にはすでに覚悟がのぞいていた。
全てのことに真摯(しんし)すぎるほど真摯に向き合っている印象を受ける。物語から離れた時には何をしているのかと尋ねれば、憂いにも似たその表情が柔らかく崩れた。「ゲーム実況動画を見たりしています」
特にお気に入りはタレント・狩野英孝のゲーム実況だ。天然な狩野が独特な実況を続けている。
「何を言うてんねやろうなと(笑い)。これはすごい面白い人を見つけたぞ!って。狩野さんはイケメン風みたいにブレイクした時はあんまり…やったんですけど、この人キャラじゃなくて本気だったんやなって分かったら、今は一周回ってすごくいとおしい目で見つめてしまいます」
「今、やりたいことは?」と聞くと、「幸せになりたいですね」と即答した。
「書いていく限りは自分自身をすり減らすのはしょうがない。でも、すり減るだけでは絶対書き続けられない。今までやったら『書くもの書いてやめたい』って言ってたんですけど、今は前向きにいかなあかんなと。書く喜び、書く癒やしを小説の中に見いだせればな、と。見いだしていきたいと思います」
受賞から1か月がたった8月23日の贈呈式。きらびやかな壇上、正賞の懐中時計を手に朝比奈さんは、あまりにも穏やかにほほ笑んでいた。そして、「何であれ、感謝しています。何であれ、書き続けていきます」と語った。
◆朝比奈さんが選ぶおすすめ一冊
▽市川沙央「ハンチバック」(文芸春秋)
ある種、この小説(「サンショウウオ―」)と「ハンチバック」っていうのは共通項もあり、対極だとも思います。
「サンショウウオ―」は一つの体にふたりがいる肉体の束縛もあるけど、体から離脱する、解放するようなシーンもあるわけです。一方、「ハンチバック」は肉体の強烈な束縛。そこから来る強烈な恨みとかルサンチマン(弱者が強者に対して抱く恨みや嫉妬心)とか怒りを抱えながらも、どこかその怒りから解放されているような書き方をされている。
束縛されれば束縛されるほど、なお自由になって、なお高く上るような精神を僕は勝手ながら見いだしたわけです。その時に市川沙央という書き手と、あの物語の主人公に人間としての尊敬が芽生えました。文学的にもちろん素晴らしいし、面白いんですけど、本当に多くの人の希望になり得る小説だと思います。(談)
◆朝比奈 秋(あさひな・あき)1981年、京都府生まれ。43歳。医師として勤務しながら小説を執筆し2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。23年、「植物少女」で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、「あなたの燃える左手で」で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞。現在は非常勤医師として月に2、3回勤務している。
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